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月刊ショパン  2004年2月号 アドリア海の青

月刊ショパン  2004年2月号 アドリア海の青_e0056670_5345551.jpg皆さんはどんな一ヶ月をお過ごしでしたか。この季節、学生のみなさんは受験勉強、練習などに追われたりしているころではないでしょうか。そんな時、とかく気持ちが硬くなってしまいがちですが、どうか音楽の喜びをめいっぱい振りまいて乗りこえてくださいね。
かくいうわたしも、今から5年ほど前、しゃにむに続けていた演奏活動に、転機が訪れたことがあります。チェロの藤原真理さんにお誘いをうけ、イタリアの音楽祭に参加して、美しいガルダ湖のほとりで出会ったのが、ブルーノ・メッツェーナ先生でした。大学時代から憧れていたミケランジェリの響きやペダルのゆらめきが、高弟だったメッツェーナ先生の手から見事に紡ぎだされるのに、ただ、ため息が出るばかりでした。流行など一向に無関心で、仙人のように穏やかなレッスンを受けるうち、いつしか、一からやり直したい気持ちにとらわれていました。
ガルダの音楽祭で知り合い、後に大切な友人となったのが、もう一人のマリさん。ジュリアード音楽院を卒業して、ニューヨークで演奏活動をしていたのに、メッツェーナ先生の音楽に魅了され、南イタリアの海辺の街ぺスカ-ラに移り住んでしまった、意志の強い、それでいてチャーミングな女性です。あの夏以降、数カ月おきにぺスカ-ラを訪れては、マリさん宅にお世話になりながら、メッツェーナ先生のレッスンを受けることになりました。陽が暮れると、テラスで目の前の大きな月を仰ぎながら、お互いの風変わりな人生に赤ワインで乾杯しました。そうして、いつしかイタリアに縁が深くなり、ミラノに住みつくまでになってしまったのです。ミラノからペスカーラまで、電車で6時間ほど。車窓いっぱいにひろがる、真っ青のアドリア海をながめていると、初めてイタリアで先生や新しい友達に出会ったころの新鮮なときめきを思い出します。あの、ガルダ湖にそびえていた絶壁も、うつくしい蒼に映えていました。
by kuroakinet | 2006-02-04 05:10 | 月刊ショパン
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