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2004年月刊ショパン 7月号 スピランベルトで

2004年月刊ショパン 7月号 スピランベルトで_e0056670_7342944.jpgみなさん、お元気ですか。この季節、イタリアの気候はとても不安定。雲の間から、すこしでも強い日差しが顔をのぞかせると、半袖でも暑いくらいなのに、数時間もすると、スイス・アルプスから雨雲が一気になだれこんで、バケツをひっくり返したような夕立にみまわれたりします。先日、ボローニャの近く、スピランベルトの可愛い教会でリサイタルをしてきました。ボローニャまで迎えに来てくれたヴィットリアは、明るく気さくなご婦人で、わたしには似合いそうもない派手な服に、若草色のアイシャドウ!「わたしの化粧品は全部日本製」と豪語していましたが、同じ日本の化粧品でも、日本人の使い方とはまるで違います。スピランベルトまでの道すがら、一面ブドウ畑の広がる丘にほれぼれとしていると、「わたしね、女王サマの時は、ここで得意げにジョギングするの」。ダイエットに成功して、人さまにお見せできる身体になったら、ジョギングしてお披露目するのだそう。本末転倒な気もしますが、洋の東西、年齢に関わらず女心は複雑です。古い赤レンガつくりのカルミネ教会で「展覧会の絵」をさらっていて、教会とこの作品が溶け合うことにびっくりしました。「展覧会」最後の「キエフの大門」では、教会の鐘が鳴り響いて、どこからか聖歌の歌声が耳に届きます。教会で「展覧会」を演奏すると、思い描いていた光景が、そのまま目の前で再現されるのに、思わず感激してしまいました。リハーサルと本番の合い間、自転車で駆けつけた神父さんが日曜礼拝をやっていて、彼らの素朴な歌声が心に染みたまま、わたしも演奏することができました。礼拝の前、祭壇裏にぶらさがった2本のロープを神父さんが交互にひっぱり、ちいさな鐘楼をからんからんと鳴らしているのが印象的で、あれが聞こえると、どこからともなく近所の人が集まるのが不思議でした。「展覧会」に「カタコンベ」があるのはご存知ですね。「カタコンベ」とは、キリスト教迫害の時代に地下に掘られた共同墓地のこと。祭壇に置かれたピアノのちょうど足元には、聖人のものらしき白いお墓が埋め込んであって、あの時ばかりは、ちとリアリズムが過ぎて、背筋が寒くなってしまいました!
by kuroakinet | 2006-02-09 07:31 | 月刊ショパン
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