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月刊ショパン 2005年1月号 ガラス城のメリークリスマス

月刊ショパン 2005年1月号 ガラス城のメリークリスマス_e0056670_845787.jpg早いもので、一年があっという間に過ぎてしまいました。去年の今ごろはシュトイアーマンの編曲したシェーンベルグの室内交響曲を練習していて、モデナからバスで少し入った先にある「カステル・ヴェートロ(ガラスの城)」という、おとぎの国のような、小さくて美しい中世の街の一角で、ピアノに向かっていました。小川にかかる橋を向こうから、丘の上のかわいいお城へ坂道が続いていて、だいだい色をした”Auguri(メリークリスマス)”のイルミネーションが、夜道に浮き上がって、それはきれいでした。
何度か「ガラスの城」を訪ねたのですが、赤れんがの城壁をくぐって、高台の「ローマ広場」でお昼寝したこともあるんです。この広場の石畳は、チェス台模様に白と黒の大理石がはめこまれていて、何だかまるで不思議の国のアリスに迷い込んだ気分。春には、ここに本物の騎士をならべて、チェス大会もするそうです。石造りの街全体もすごく古めかしくて、でもメルヘンチックで、ちょうど「不思議の国」の挿絵みたいな感じ。だから、ラッパうさぎが、ハートに縫いとりされた中世の服でファンファーレを鳴らしたり、スペードの庭師やハートの女王が大騒ぎしていてもぴったりくるような、不思議な時間が流れていました。そう思うと、「ガラスの城」のネーミングも、何だかばっちりですね。いつか、モデナ出身のヴィットリアと話したとき、「ガラスの城」って素敵なところよね、と話すと、「あの街は本当にちょっとした宝石よ」、と思わずうっとり目を細めていましたっけ。ヨーロッパに出かけると、そんなファンタジーが暮らしのなかに溶けこんでいるのが、すごく羨ましいのです。だから、誰もが自分の人生の晴れ舞台で、一人一人主役をおおみえきって演じていけるような…。音楽を演奏するとき、そんなファンタジーがとても大切に感じることがあるんです。空気の匂い、太陽の光、人々の笑いとかレストランで食器が触れあう音。生きてるって実感がこもっていて、音楽にも栄養を与えてくれる気がするんです。今ごろ、きっとあの坂道に、まただいだい色のイルミネーションがきらきらしているころじゃないでしょうか。みなさんにも、Buon Natale e Felice Anno Nuovo(メリークリスマス、ハッピー・ニューイヤー)!
by kuroakinet | 2006-02-24 08:02 | 月刊ショパン
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