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続備忘録...東京現音計画#12:黒田亜樹 with フランチェスコ・ディロン

7月2日の公演・・・・こちらも決して忘れたくない今夏の一大イベントだったので、
写真と当日のプログラムノートを貼っておこう。

   




「やっとすべてがしっくりきたよ。煙を上げるムーグも燃え上がる
炎が聴衆を覆うような装置もなしで演奏された"タルカス"。
僕が聴きたかったのはこれだったんだ。ありがとう、AKI」
キース・エマーソン 2004年ロンドン

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キース・エマーソンはロックの中にクラシックやジャズや現代音楽のテイストを大胆に取り込み、ロックを巨大な音楽作品に進化させました。彼の作品を20世紀の現代作品として、器楽作品として捉えてみたい、という視点でミラノ在住の作曲家マウリツィオ・ピサ―ティと相談しながら作ったCDが「黒田亜樹・タルカス&展覧会の絵」(2004年ビクターエンタテインメント)でした。当時の私にとってはイタリアでの新しい仲間たちとの初作業であり、大きな転機となりました。

オペラの殿堂パルマレッジョ劇場で同じ年にイタリア初演を行いましたが、日本ではこのCDバージョンは演奏されることなく15年
東京現音計画のプログラム監修を考えたとき、真っ先に東京の仲間とイタリアの仲間の合体バンドでタルカスを日本初演したい!という案が浮かびました。
レッジョ劇場で共に初演をしたバイオリンのアルド・カンパニャーリとチェロのフランチェスコディロンは、世界的に注目される弦楽四重奏"クアルテットプロメテオ"のメンバーとして常に第一線を走り続けていますが、このためにイタリアから駆け付けてくれました。特にフランチェスコディロンは世界中にアンテナを張っており、演奏だけでなく音楽祭のプロデューサーでもあるので、選曲にも多くのアイデアを提供してくれました。
東京現音計画がいつにも増してゲンダイオンガクから飛び出す一夜をお楽しみください!

7月2日 黒田亜樹

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今回特にメンバーの有馬純寿さんがピサ―ティ版タルカスの一部をエレクトロニクスで改造?施したのが、新たなタルカスを演奏する上での強烈なアクセントになりました。このメンバーで日本初演ができたことに改めて感謝します。

なんと、タルカスを以前二台ピアノで共演したスーパーピアニスト三柴理さんが駆け付けてくださいました。以前よりさらにロックだったよ!と音符のプリントシャツで久しぶりに会っても素敵な三柴さん♥
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人気キーボーディストがもう一人♡セカオワのSAORIちゃん!彼女は高校生の頃私の世田谷のマンションに入り浸っていましたが、スクリャービンとかラヴェルが絶品のピアニストだったのです。Saoriの左は国際コンクールで次々と成果をあげている小塩真愛ちゃん、わたしの右はアンサンブルピアニストとして大活躍の鴇田恵利花ちゃん、3人とも私の自慢の教え子たち!皆駆けつけてくれて終演後のにぎやかなこと~
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ロックファンも現代音楽マニアも両方が喜んでくれる演目を、とフランチェスコとともに考えた曲目一覧はこんなメニュー。

ディヴィッド・ラング《リトル・アイ》(1999)チェロソロと4人の打楽器
シモン・ルフラー《セプテンバー 08》(2008)キーボード
シモン・ステン=アナーセン《Next to Beside Besides》(2003/2006)東京現音計画版
ケイト・ムーア《ヴェルヴェット》(2010)チェロ、ピアノK.エマーソン – M.ピサーティ《ゾーン=タルカス》(2004)
東京現音計画版


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前半のフランチェスコ&黒田亜樹セレクトの曲目解説については、フランチェスコご夫人で音楽学者の
エレナ・アッバードが詳細に書いてくれました。(解説について私とフランチェスコが問答をしていたら何時の間にか横でプロの彼女が原稿を仕上げてしまっていたとい顛末です・・・笑)こちらも力作なので貼っちゃおう!


Genon Project curated by Aki Kuroda and Francesco Dillon, Tokyo, 2nd July 2019


今日は、師弟関係にある二組の作曲家の作品を通して、現代音楽の目覚ましい国際的傾向を二つ紹介しよう。
先ず、ヨーロッパで最も新しく顕著な傾向を、デンマークの作曲家シモン・ステン=アナーセン(1976) と、オーフスの王立音楽アカデミーで
ステン=アナーセンに学んだ、同郷のシモン・ルフラー ( 1981年コペンハーゲン生)
の作品を聴いていただきたい。彼らは音楽を通して、演奏や、音楽的な身体表現と密接に関わりながら、虚像の姿を浮き上がらせる。
その姿勢はステン=アナーセン《Next to Beside Besides》(2003/2006)で見て取れる。
このモジュール形式による作品は、さまざまな編成のための「翻訳」版(と ステン=アナーセンは呼ぶ) の存在が想定されている、チェロ独奏作品をもとに作られている。
この原型となる作品《Beside besides》 (2003),は、一種の演出的「翻訳」を生み出す、音を生み出す動きの身振りに焦点を絞られている。
楽器毎にそれぞれ番号が割り振られている「翻訳」群は、二重奏、三重奏などどのような組み合わせの同時演奏でも演奏可能で、今回は三ヴァージョンチェロ独奏
(#0),、サックス独奏(#2)打楽器独奏 (#4)を同時演奏する。
歪んだ音を発生させるキーボードのためのシモン・ルフラー《セプテンバー
08》の題名は作曲時期を表す。反復やリズミックな細かいクラスターによるこの作品は打楽器的な書法による。
ルフラー作品もステン=アナーセンに等しく、演奏時の音楽家の身体表現に重点が置かれている。
一方、ヨーロッパを離れ、アメリカやオーストラリアに集中的に見られる音楽の潮流として、現在では最も知られた名前の一人デビット・ラング(1957年ロサンジェルス生)と、まだ若年ながら既によく知られた存在となった彼の弟子でアイルランド系のオーストラリア人女流作曲家、ケート・ムーア(1979年生)を挙げたい。ラングとムーアの足跡は、ラングがマイケル・ゴードンとジュリア・ウルフらと共に計画し、そして創立した、「バング・オン・ア・カン」のプロジェクトの中で交わる。「缶を叩け」という「バング・オン・ア・カン」には、ヨーロッパのアンサンブルとの交流や若い作曲家の研鑽する機会などが当初から計画に含まれていた。
ラングはニューヨーク楽派に属し、ライヒのミニマリズムを最も直截に継承する。彼の音楽は堅固でロック的なものか、柔らかく詩的なものの二種類の作風に分けられる。「リトル・アイ」の、非常乾いた音や「単純」さ、ほぼ素に近い状態の彼の書法が選択されているが、実は後者のより情感豊かな作風に属する。
作品はラングがレジデンス作曲家としてイタリア滞在中に、フランチェスコ・ディロンディロンの参加するイタリアの現代音楽アンサンブル「アルテル・エゴ」のために作曲され、演奏に関わるそれぞれのグループの個性を活かした作品となっている。ここでは、それぞれの演奏家がアマチュアの打楽器奏者の役をこなし、独奏チェロを伴奏する。
「リトル・アイ」は、ケート・ムーアのチェロとピアノとの二重奏「ヴェルベット」と対比を成す。ムーアの書法はラングのミニマリズムを継承しつつ、より斬新でロック的アプローチが見られる。この作品で使われるリズムの複雑性も、ラングに比べより洗練され、同時にチェリストとして育った彼女とチェロとの関係も詳らかになるだろう。この作品についてムーアは、ルネッサンスの生地の紡ぎ模様、特に、今年没後500年にあたる著名なダヴィンチの肖像画で使われいる紡ぎ模様に霊感を受けたと話している。

これら全ての作品が日本初演である。

エレナ・アッバード
Elena Abbado

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クロアキは節目の年齢になったわけですが、自分のこれまでの活動をまとめ、そして次へ向かう方向を照らすようなコンサートが出来ました。おかげさまで大入り袋が出ました!みなさまありがとうございました。

by kuroakinet | 2019-09-15 09:08 | コンサート
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